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ワサビ田開拓

記事ID:0054724 更新日:2016年3月1日更新 印刷ページ表示

いま世界に広がるわさびの魅力
雑菌を抑えるスゴ腕
信州・安曇野は日本一の産地

 

世界にツーンと広がる日本のわさび

わさびの画像
優れた効能が再発見されているわさび

 ツーンと鼻に抜ける辛さが、持ち味のわさび。
 実はわさびの植物学上の名前は、ワサビア・ジャポニカ(Wasabia・japonica)といい、ジャポニカの名前がつくことでわかるように、日本原産の植物です。
 そしてわさびは今、寿司や刺身などに欠かせない香辛料として、世界中にその存在を広めています。健康長寿を誇る日本の食文化と一緒に、健康的な食材の1つとして海外でも注目を集めているのです。雑菌が増えるのを抑える強い力を持ち、美肌などの若返り効果もあると言われています。また抗がん作用の研究の面からも注目されています。
 平成16年の生産量では、都道府県別で長野県がダントツ1位(2位は静岡県)。そして長野県全体では、90%以上が安曇野産なのです。
 それは、安曇野がわさびの好む冷涼な気候と、1年を通して13度前後という清らかな水に恵まれているからなのです。

安曇野わさび田湧水群を生み出す安曇野の地形

常念岳の画像
常念岳

 3,000m前後の北アルプス山麓に広がる安曇野は、いくつもの扇の形の扇状地が重なって並ぶ、全国でも珍しい複合扇状地の地形をしています。
 そのため山から下ってきた川の水は、扇状地を流れるうちに一度地下に浸透します。そして扇状地が終わる扇端の部分、安曇野で低い場所に集まって、湧き出てくるのです。ここにワサビ田が開拓されています。
 この地下をくぐり抜けてきた湧水は、外気温に左右されることなく、1年中水温が13度前後。そのためワサビ田で働く人たちは、外気がマイナスになる冬でも意外に軽装だということに気づくでしょう。体を動かして働いているためにホカホカと温まることはもちろんですが、ワサビ田に浸かっている足元は、13度もあるのですから。
 そしてこの、独特の地形と湧水の自然を利用したからこそ、安曇野は日本一のわさびの収穫量を誇っているのです。
 それではいったい、いつごろから安曇野でわさび栽培が始まったのでしょう。

大正時代の中ごろにナシ畑からわさび栽培へ

わさびの花の画像
わさびの花

 明治の初めから大正時代の中ごろまで、豊科地区南穂高の重柳(しげやなぎ)から穂高地区から北穂高にかけての一帯は、ナシの栽培地でした。
 ところが湧き水によるナシの病害が多く、水はけを良くするために作った水路で、わさび栽培が始まったと言われています。
 明治20年代にはわさびの粕漬けを、犀川の船で新潟方面へ販売を始めました。また、明治35年に篠ノ井線が開通して東京に出荷され、高い値段で売れたことから、ナシ畑はワサビ田へとかわっていったのです。そして大正12年の関東大震災と台風の際に、それまで主要産地だった伊豆や静岡のわさびが大打撃を受け、信州産のわさびが脚光を浴びることになったのです。
 昭和15年ごろ、犀川にダムができるまでは、わさびの排水路まで、はるか遠くの日本海から鮭が遡上(そじょう)することもあり、捕まえて薫製にし、お正月のごちそうにしたこともあったそうです。

日本で一番大きなワサビ田は東京ドーム10個分以上

大王わさび農場のわさび田の画像
大王わさび農場

 わさびは農産物ですが、安曇野の美しいワサビ田を観光客に紹介している場所があります。穂高地域御法田(ごほうでん)にある大王わさび農場です。
 ここは約15ヘクタール、東京ドーム10個分余りの広さを持つ個人のワサビ田です。創業者の深沢勇一は、土地も資金もほとんどない状態からワサビ田の開田に着手しました。
 大正4年から工事に取り組み、農閑期に地元の農民1日平均200人を雇い、20年の歳月をかけて地面を掘り下げ、土砂を周りに積み上げて、最初のワサビ田を完成させたのです。
 まだゴム製の長靴もショベルカーもない時代です。人々は厳寒期でもわら靴やぞうり履き姿で水に入り、鍬(くわ)などで地面を掘って、「ぱいすけ」と呼ばれるザルのような簡単な道具で担ぎ上げたり、トロッコを手で押し上げたりして土砂を上まで運びあげました。

今また見直される水の尊さとわさびの魅力

安曇野を象徴するワサビ田の風景は、その特異な地形と自然環境、先人の開拓精神から生まれました。そして今、安曇野を訪れる多くの人々が立ち寄る場所になっています。
よどみなく流れ続ける湧き水の中に、描きだされる幾何学的な模様。そしてそのワサビ田と湧き水の風景や、くっきりと移り変わる四季の風景にいやされ、魅せられてまた人は訪れるのです。
目に美しく、食べてヘルシーなわさび。肉や魚のようにメインディッシュ(主役)にはなれないけれど、刺身や寿司にはなくてはならない“名脇役”ですね。

参考

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