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叱られて、魅せられて、安曇野

印刷用ページを表示する 掲載日:2015年10月29日更新

人物写真

バジルクラブ代表
鈴木達也

 私がこの安曇野で農業を始めたのは18年前です。信州大学を卒業して近隣の農業法人のお世話になった後、安曇野市三郷の知人に土地を借りました。「農業は儲からないじ」とか、「農地や機械はどうするだい」など、当時は新規就農者というと珍しそうな目で見られました。「兄さん良くやるねぇ。どこの婿さんだい?」当時独身の私は、よほど頼りなく見えたに違いありません。この地の人もあづみ農協も、私を暖かく育苗してくれました。

もともと生き物が好きで、子供の頃から昆虫や動物の観察ばかりしていました。専攻も菌類の利用を探るものでしたし、高山植物の調査や動物園にもよく行きました。冬は酒蔵の杜氏をしています。人以外の生き物は、実に謙虚に貪欲に生きています。試験管や動物園のような閉ざされた環境でも、信州の野山や河川など限りない生態系の基でも、絶えず競争と共生を折り合い続けます。
 農業とは、そんな自然環境の中で人に都合のよい作物を生みだす仕事です。若いころの私は失敗ばかりで、安曇野の自然から"No”(折り合えない)と言われていましたが、畑の隅の放任トマトは美味しく育ったものでした。「なにも面倒を見ていないトマトがこんなに美味しいのに、お前の農業はなんだったのか!」安曇野の自然に叱咤された気持でした。

水、空気、森、おひさま。とにかく自然環境に恵まれた安曇野です。いろいろな生き物が有機的につながって、食物連鎖が人の生活まで循環したらと考え、バジルクラブという“結”を作りました。

シニアボランティアや若い農業者と小学校で合鴨農法の食育を進めたり、料理教室や味噌作りやマルシェなどを行っています。食べ物の循環ばかりでなく、感謝の気持ちもつながれば、地産地消で経済も循環します。将来、安曇野市民は生産者と消費者の区別が無くなることが私の希望です。

これから安曇野市に来られる方々にも、相互扶助の気持ちが大切だと思うのです。自然の中でのんびりと暮したいなら、周囲との協力や許容が不可欠です。心地よい環境を望むなら、一緒に良い環境を育てましょう。

安曇野市は、職農教育(食農教育)に力を注いでゆきます。これは、職業としての農業の魅力を子供たちに伝える教育です。田園産業都市の実現に向けて、新旧市民や農家・非農家が力を合わせて子供を育ててゆく。この子供達が「おらぁ安曇野に残って百姓するだ」というときまで、大人はみんな環境作りに頑張らないといけないですよ。