ページの先頭です。 メニューを飛ばして本文へ

本文

収蔵作品紹介(四季抄)

記事ID:0001949 更新日:2015年10月29日更新 印刷ページ表示

収蔵作品詳細
四季抄の写真
【四季抄】

種類:漆パネル
制作年:1993年
サイズ:1170× 910mm

第32回日本現代工芸美術展出品作である。前年の第31回展に出品した作品「春秋譚」と、モチーフ、構図などの点でよく似ている。しかし「春秋譚」に比べて、遠方に望む山の峰や螺鈿の天体によって奥行きを感じさせる作品世界である。
「四季抄」においては地の漆黒の部分が、たんに金による描写を映えさせるための画面ではなく、それ自体として空間の広がりを表現するものとして意味を持つことがよく分かる。
黒のイメージから、螺鈿の丸い月に照らされ漆黒の闇夜に浮かび上がる花、貝殻、瓶、果実、麦、小鳥…と夜の情景のようにも見える。しかし、丸い貝をあえて太陽ととらえてみるとどうだろう。
題名からイメージを膨らませ、春のやわらかい陽光、夏のまばゆいばかりの陽射し、秋の夕焼け、冬の窓越しの薄い光、それぞれに照らし出されるモチーフたち、それらを作品の中に見てみる。鑑賞者の見方によって、様々な色彩を放つように感じられるから不思議である。
高橋節郎は「漆の黒には七色の光がある」と言う。その光には、私たちの創造の世界を無限大に広げる力があるのかもしれない。