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蒸気機関車を引っ越しました!

印刷用ページを表示する 掲載日:2015年12月28日更新

 「シュッシュッ!ポッポーッ!」が代名詞の蒸気機関車。安曇野市穂高有明にある、D51483号が太陽光発電施設の整備に伴い、引っ越しすることになりました。

 今回の作業は、株式会社ジェイアール貨物・北陸ロジスティクスさんに請け負っていただきました。作業全体の指揮をすることになった事業部長の前野さんは、普段は鉄道車両やレールの輸送に携わってます。

「ポッポー!!」

移設方法の打ち合わせをしていると、前野さんの携帯電話が鳴りました。着信音を汽笛にするほど鉄道に熱意を持つ前野さん。これまで蒸気機関車の移設は3回経験していますが、クレーンで吊りトレーラで移動することはあっても、軌道(レールや枕木)を敷いて動かすことは初めてであり、全国でも聞いたことのない作業のようです。

 「動輪が動くか心配」

 移設の経験が豊富であっても、今回の作業は極めて困難なものになりそうです。蒸気機関車がここに来てから38年。色々なところが錆びて鉄同士がくっついている状況なのです。この移設がうまくいくかのカギは、「動輪(車輪)やピストンが従来通り動くか」で、固着してしまっている車軸やシリンダーに、時間をかけて油を注し、馴染ませてからの作業になります。 他にも、軌道(レール)を敷いて移動することなど、作業条件はかなり難しい状況です。それでも前野さんの今までの経験や、蒸気機関車の機関士や製造に携わった方々の協力を得て、当日の作業に望む見通しが立ちました。

SLを見守る

うまく動くのかな?

 作業日程の前半は天気にも恵まれ、いよいよ引っ越しになります。ワイヤーと蒸気機関車を繋いで重機で引っ張ると、蒸気機関車自体は動きましたが、懸念されていた動輪が固着してしまっているようで、やはり動きません。

 「引きずってでも、動かすか…」

 しかし、引きずると作業日程も変えなければならず、予定が遅れてしまいます。現場にいる技術者が試行錯誤を重ね、何回か衝撃を与え動かしていると、動輪がやっと動くようになりました!!実際にピストンが往復し、「シュッシュッ!」と音を鳴らしながら蒸気機関車が動く様子は、息を吹き返し呼吸をしているように感じます。この動画は、終始、作業工程を動画撮影していただいた、映像工房・Kの小林さんから提供していただきましたので、ご覧ください。

SLの鼓動-移動動画

 一回転すれば油が浸透し、順調に動くようになります。軌道を敷いては、蒸気機関車を引っ張る。スイッチバックを何回も繰り返し移設先へ。作業の様子を、「サンクラブ穂高」様の屋上から、一定間隔で撮影したものを動画にまとめたので、ご覧ください。

SL移動のタイムラプス撮影

職人の仕事でカッコイイ!!

 今回の作業を終始、近くで見守っていただいた、あづみのD51483保存会で会長の野中由紀子さんの感想です。また、「作業する人たちの一人ひとりが活きていて、安心して見られた」と非常に感動している様子でした。

 あづみのD51483保存会は平成14年に結成されました。野中さんの家族で、鉄道ファンである当時中学一年生だった子どもに、「ボランティアで呼びかければ、人も集まる」との言葉から始まったのです。

 ただ、塗装作業をするだけでなく、鉄道が好きな子供や大人、色々な人が集まることから、ぬかくどで炊いたご飯や地元産の安曇野豚などを振る舞い、お楽しみ付きで作業をすることで、「安曇野っていいな!」「みんなで作業することって楽しい!」と思われるような活動を続けてきた、と野中さんは話します。

SL前面

蒸気機関車は産業遺産

 このD51483号は熊本から広島、北海道で貨物輸送に活躍し、今日の日本経済、文化、地域産業を支えてきました。広島では原爆の灰を浴びたり、256万km以上走り続けたり…昭和51年3月の廃車までたくさんの苦労があったことでしょう。

  • 「会社のみんなで、蒸気機関車と一緒に記念撮影をした」
    当時の写真を手に振り返る人。
  • 「長いトンネルを走ると、鼻の中やシャツがススで黒くなった」
    思い出を話してくれる蒸気機関車の機関士。
  • 「この現場は楽しかった。今後の自信に繋がる」
    現場で達成感を表現する前野さん。

 皆さんの胸の中に色々な思い出を残してくれました。これまでも、これからも、この雄大な蒸気機関車は、たくさんの人を魅了することでしょう。

SLと前野さん

今でも残る当時の面影

 安曇野市には、明科地域にある旧篠ノ井線(廃線敷き)は昭和63年まで利用され、信号機、山を削って作った側壁、歩いて通れるトンネルが二箇所、当時の面影が残されており、現在はトレッキングコースとしてたくさんの人に親しまれています。  

 そのひとつである漆久保トンネルは、地元の明科で作られたレンガが積み上げられ、見上げると、黒いススがまだ残っていることから、蒸気機関車がここを通ったことがよく分かります。近代的な工作物にない、歴史を感じるモノがここにはあります。

 蒸気機関車と廃線敷を見ながら、想いを馳せてみてはいかがでしょうか。安曇野でお待ちしております。

SLと有明山