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安曇野市三郷明盛の中萱地区にある熊野神社では、毎年8月最後の週末に例大祭が行われ、「お船」と呼ばれる船の形をした山車が曳かれます。熊野神社の祭りに出される山車は、昼の「お船」と夜の「屋台」の2種類です。かつては上中萱と下中萱にそれぞれお船と屋台が1台ずつあったといわれていますが、現在は上中萱と下中萱が協力して、お船1台と屋台1台を出しています。
熊野神社のお船は全長約13メートル、高さ9メートルで県下最大級といわれます。お船は、車輪の付いた櫓と腕木と刎木を組み合わせた骨格に「ナル」と呼ばれるケヤキの枝で腹を作り出しています。船の上には「木偶」と呼ばれる人形で歴史物語の一場面が飾り付けられます。この飾り付けは、祭典初日である土曜の朝から行われます。お船は乾原と呼ばれる広場から熊野神社に向かって曳かれ、沿道は多くの住民でにぎわいます。乾原は豊科高家の真々部氏の館跡から見て乾(北西)の方角にあることから、この名が付いたと言われます。乾原は、かつて下中萱の山車が出発した場所でもあります。
かつては、お船・屋台の飾り物を「お祭り青年」と呼ばれる若者たちが担当していました。昭和56年(1981年)からは、「紫石会」が結成され、現在まで飾り物を担当しています。紫石会という名称は紫水晶に由来しており、磨けば磨くほど光るという理想がこめられています。この紫石会と船の骨組み作りを担当する熊野神社の氏子との努力により、熊野神社の祭典では毎年すばらしいお船を見ることができます。