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おいしさ、楽しさ、大変さ わかちあう
農業体験を通じて 食・環境・農業を考えるきっかけづくり
子どもに安全で安心な作物を食べさせたいという思いから、仕事の傍ら農薬・化学肥料・除草剤を使用しない体験型シェア農業に取り組む大島さん。活動をしていく中での気づきや思いを聞きました。
大島和美さん
静岡県出身。薬剤師としてドラックストアや調剤薬局で勤務後、免疫力や化粧により皮膚から体に入る化学物質の影響などに興味を持ち、化粧品のサロン運営に携わる。平成24年、結婚を機に安曇野市へ移住。令和元年4月に「Eisbar Platz」を設立。
人とのつながりで広がる活動
出産を機に子どもに安全安心な食事をさせたいと思うようになり、食の安全性をより意識するようになりました。消費者側のニーズもあり、農作物の多くは見た目や生産性が重視され、安全性が二の次になっていることに対し疑問を抱くように。そこで化学肥料や農薬を使わない野菜づくりを学び、家庭菜園で実践しようと、同じ思いを持つ知人2人と「Eisbar Platz」を立ち上げました。
全員が農業初心者で、活動1年目は講師を招いて勉強会を開き、参加者を募って野菜を育てましたが、野菜の成長と活動頻度が合わず、思うように収穫できませんでした。しかし、活動を知った人から「担い手がいない田畑を使ってほしい」と声を掛けていただくことができ、2・3年目は大豆、米、ブルーベリーに特化し、参加者と一緒に農薬・化学肥料・除草剤を使用しない栽培に取り組みました。
1年目の反省を生かした結果、今度は順調に収穫でき、「作った農作物を使い切れない」という課題が生じました。そこでパン屋とコラボし、ブルーベリーを使ったパンやスイーツの販売を始めました。その後も活動に賛同する人の紹介で知り合った食品製造に関わる皆さんの協力を得られ、ジャムや米こうじ、みそなどの製品づくりや、マルシェでの販売、料理教室の開催につながりました。また、稲作参加者の中から4組が田んぼを新たに取得し、お米を作るようになるなど、うれしい発展もありました。
人につなげていただくことで少しずつ活動範囲が広がり、開始当初には考えもしなかった反響があり、やりがいを感じています。
できる形で続けていく
メンバー3人ともそれぞれ仕事や子育てがあり忙しいですが、得意な部分を生かしてフォローし合えたからこそ、ここまで続けられています。また、無農薬農業の実現には大きな労力がかかり、なりわいとして取り組むのは本当に大変ということを、身を持って実感しました。だからこそ、無農薬農家を応援したいという気持ちが強くなりました。自ら無農薬野菜を作れなくても、支援の形はたくさんあります。今後ライフスタイルの変化で活動に全力を注げなくなっても、買い物をするときに意識して体に良い物を選んだり、米と大豆は自分たちで作り続けるなど、無理なく楽しくできる取り組みを続けていきたいです。
<MEMO>
●Eisbar Platz
ドイツ語でEisbarは「ホッキョクグマ」、Platzは「場所」という意味。絶滅が危惧されるホッキョクグマから名前を付けた。農園の名前は「しろくまファーム」