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「子どもが楽しめてよかった」から「子どもと一緒に楽しめた」へ
おもちゃが持つ笑顔の魔法を広めるつながりの伝道師
市民活動グループ・おうちワークショップで、木のおもちゃを通して子どもから大人まで幅広く交流できる場所づくりに励む田中京子さんに話を聞きました。
田中京子さん
神奈川県相模原市出身。多くの人との交流を求め、2022年6月に市民活動グループ・おうちワークショップを発足し、精力的に活動中。
保育士/おもちゃコンサルタント/木育インストラクター
初めて出会う芸術品
安曇野市に越してきたのは2011年12月のこと。それまでは幼稚園や児童館などで子どもと関わる仕事をしてきましたが、子どもだけではなく多世代にわたる交流をしたいと思い、活動を始めました。
グループが発足した初年度は、マルシェやクリスマス会などのイベントを数回行いました。しかし、どのイベントも当日は交流があるもののその時限りで、恒常的なつながりに発展していきませんでした。そこで目を付けたのがおもちゃです。
多種多様なおもちゃの中から私たちが使うのは「グッド・トイ」の条件を満たすものです。その中でも、木のおもちゃを使うことを特に大切にしています。木という自然物を使うことでぬくもりや作り手の思いを感じられるし、親子何代にもわたって引き継ぐこともできます。全国におもちゃ美術館があるように、おもちゃは子どもが生まれて初めて出会い、触れる芸術品。だからこそ、その質感や香り、ぬくもりなど五感を使って遊べる木のおもちゃにこだわり、世代を超えたコミュニケーションのツールであることを伝えながら活動を続けています。
多世代を笑顔にするツール
おもちゃは「子どもが遊ぶもの」というイメージがありますが、そうではありません。あるイベントで、親子三世代で参加してくれた家族がいました。そこで目にしたのは、子どもが使って散らかした木製パズルを片付けるおばあちゃんの姿。ごく普通の光景かもしれませんが、おばあちゃんは「これ、どこだっけ」などと笑いながら片づけをしていました。そして「子どもが喜んでくれてよかった」ではなく「一緒に楽しめてよかった」という感想をもらいました。そのとき、おもちゃは子どもだけのもではなく、幅広い世代を笑顔にできるツールであるということに気付きました。
情報が簡単に手に入る便利な時代だからこそ、触れたり感じたりといった五感を通しての体験が注目されています。おもちゃは使う人によって遊び方は無限に広がり、そして多世代の交流と笑顔が生まれます。安曇野は木に囲まれ「さとぷろ。」が代表するように暮らしに木を取り入れる考え方が根付いています。その利点を生かし、このほど「安曇野に木育を推進する会」を立ち上げたので、本年は木育キャラバンを行う予定です。これらの活動を楽しみながら進めていきたいです。
<Memo>
〇グッド・トイ
「健全」「ロングセラー」「遊び・コミュニケーション尊重」の3つの方針を満たす、おもちゃの専門家が選定するおもちゃのこと。
〇さとぷろ。
市民・企業・行政が連携し、より多くの人が里山に関心を持ち、楽しみ、里山の再生に貢献できるような仕組みづくりを目指す活動。
<外部リンク>