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支援の流れが循環し 日常をつなぐ場所を目指して
地域から食を通して子どもの入院に付き添う家族を支える
子どもの入院に付き添う家族の一息つける機会作りを目指し、こども病院で安価にお弁当などを販売している小畠さんに話を聞きました。
小畠千奈都さん
息子の通院をきっかけに安曇野市へ移住した。元看護師。こどもの入院付き添い課題とケア者である家族に光を照らしたいと思いを込めた「ランチテラス」の代表として活動中。
病院に届く地域の風
息子に生後間もなく病気が見つかり、愛知県の病院で2カ月間入院の付き添い生活を経験しました。子どものベッドサイドでの生活は、日常の感覚を消し淡々と耐えなければ日々をやり過ごせませんでした。夫に付き添いを交代するときも、息子が大変な状況の中で、休んだり気分転換したりすることに罪悪感すら感じていました。
当時の食事は子どもが寝た合間に院内のコンビニやレトルト食品に頼る生活でした。その時に私のこころとからだをいやしてくれたのが、遠方から届いた家族の手作りのお弁当と、同じ病室にいたお母さんたちや医療従事者との交流でした。その経験から、まずは付き添う家族が元気でいられることが子どもを支える大切な力になると感じ、何かできないか考えるようになりました。
子どもの入院を支える家族が「おいしい食事」で自分自身をいたわり、社会から孤立しないよう地域のサポートの輪を広げようと、子育て仲間とともに「ランチテラス~長野県立こども病院入院付き添い家族応援ネットワーク~」を令和6年10月に設立しました。
地域の飲食店と協働し、平日の昼にこども病院でお弁当やスイーツを販売しています。利用者から「ランチテラスの活動は病院の中に地域の風を吹かせてくれている」と声を掛けてもらったことがありました。病院はどうしても「非日常」な空間になりがちです。地域の風が少しだけ中に入ることで、日常との接点を取り戻し、社会からの孤立感を和らげる可能性があることを感じました。
子どもは地域で育てる
県内30店舗に募金箱を設置しています。皆さんから預かった募金は、入院中の子どもに付き添う家族の食事を支える「おうえんチケット」に充てています。
募金箱を通じてさまざまな世代の人に知ってもらい、普段の暮らしの中で自然に出会える活動でありたいと考えています。なぜなら、子どもは地域の中で育っていく存在だからです。この一年、募金箱の設置が広がる中で「子どもの入院にはこんな課題があるのね」と声を掛けてもらうことが増えてきました。子どもは地域のみんなで育てる――。ゆっくりですがそんな支え合いを未来にもつないでいきたいです。
制度や暮らしのさまざまな揺らぎの中で表れる困りごと。そこには地域がそっと手を差し伸べられる可能性があると信じています。かつて困っていた自分と同じような境遇の人が一人でも少なくなるように、地域の「お互い様」のやさしさをこれからもつないでいけるよう活動していきたいです。
<MEMO>
●おうえんチケット
こども病院で付添証、面会証を持っている家族が使える200円の食事割引券。


