本文
伝統的な庭木のイメージを 「格好良い絵画」へ
思い出を後世へつなぐ庭木のアーティスト
庭木とアクアリウムを巧みに融合させ、独自の世界を作り出している庭師・降幡篤志さんに話を聞きました。
降幡篤志さん
17歳で造園会社に入社後、庭師の父と大南造園を創業。代表に就いて7年目、庭師歴24年のベテラン。自社のロゴを制作したり、アパレルブランドを立ち上げるなど、精力的に活動中。
たどり着いた 誇れる仕事
庭師になる前は建設現場をはじめさまざまな仕事を経験しました。それまで一つの仕事を長く続けることができなかったため、熱意を持って仕事に打ち込んでいる友人が格好良く見えたり、うらやましく思ったりしていました。「次は絶対に辞めない」と決意し、庭師である父の下で修行を始めました。
現代の家は洋風のものが多く、それに合わせて庭も作られてるので、松やみねぞなどの昔ながらの庭木は不要とされ、切られてしまいます。でも庭木って、子どもが生まれた時に植えたり、家を建てた時に植えたり、代々その家と共に生きてきた歴史でもあるんです。
どうしたらその思い出を1本でも残してもらえるかと考え、若い人に人気のストリートカルチャーに目を向け、その要素を取り入れた作品を作り始めました。そのころから仕事が楽しくなり、現在では誇りとやりがいを持って打ち込んでいます。
思い出を「格好良い絵画」に
若い人には古くさく思える庭木をいかに格好良くし、若者ウケ良くするか――。天野尚さんのアクアリウムからヒントを得て、「庭リウム」を思い付きました。
庭リウムのこだわりポイントは余白。松の枝が生み出す空間を、枠で囲むことでシンプルながらも奥ゆかしさを感じるように制作しています。マイホームと一緒に植え、家族と共に成長してきた思い出の庭木を1本でも残してシンプルに飾れれば、その家のシンボルとなります。庭リウムがきっかけで、庭木という思い出を無くすことなく、後世に残していける「格好良い絵画」になったらうれしいです。
発信し続ける手入れの大切さ
庭師として働いている以上、根本には日本の木を大切にしたいという思いがあります。特に最近は松くい虫被害による影響が庭木にも出てきています。松を定期的に手入れすることは、被害を防ぐことにもなります。庭木だけでなく安曇野の環境を守る上でも、定期的な手入れの大切さを発信していきたいと思っています。庭木や自然の良さなどを少しでも多くの人に知ってもらうために、地道にSNSなどで情報を発信し続け、多くの人に活動を知ってもらいたいです。
<Memo>
●みねぞ
イチイのこと。垣根などに植えられることが多い常緑樹。国産の木の中で縁起の良い木として好まれ、工芸材や仏像などにも使われる銘木。
●天野尚
写真家、実業家。水槽に生態系など自然の要素を取り入れ、独自の水草レイアウトスタイル「ネイチャーアクアリウム」を確立し、「アクアデザインアマノ」を創業。
<外部リンク>