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【食の歳時記・冬】冬至に「かぼちゃだんご」を食べる習わし
冬至にかぼちゃを食べる、という風習は、日本各地に伝わっています。
安曇野でも、冬至にかぼちゃを煮て、小豆と小麦粉のだんごをいれた「かぼちゃだんご」を食べる風習があります。
農家で長野県農村生活マイスターの遠藤昭子さん(明科)にエピソードをお聞きしながら作っていただきました。
【お話を聞いた方:遠藤 昭子さん】
農業を営みながら、地元での加工所の立ち上げにも尽力し、地域の食文化の伝承等のためにも活躍。
農家/長野県農村生活マイスター
「かぼちゃを食べると風邪をひかない」
冬至は、一年で最も昼間の短い日です。
太陽の力が最も弱まる冬至に、夏の太陽の光をたっぷり浴びて育った黄色いかぼちゃを食べることで、太陽の恵みを分けてもらうという意味合いがあります。
「冬至にかぼちゃを食べると風邪をひかない」、「冬至にかぼちゃを食べると中風(中気)にならない」と、昔から言い伝えられてきましたが、実は迷信ではなく、かぼちゃにはβ-カロテンが豊富に含まれており、免疫力の向上、のどや鼻の粘膜の保護に効果があると言われています。
遠藤さんも「冬に色の濃いものを食べると寒さに打ち勝つ」と自身のお母さんから教えられたそうです。
小麦のだんごや小豆を入れるのは
この地域に伝わる「かぼちゃだんご」には、かぼちゃの他に小麦で作っただんごと小豆が入ります。(小豆は入れない家庭もあります。)
安曇野では、昔から米作りだけでなく、小麦づくりを盛んだったことや、日本のお隣の中国の風習で、同じように冬至に小豆粥をたべるということがとりこまれたのだと考えられています。
遠藤さんは、お正月に黒豆を食べるのと同じように、「冬をマメ(豆)に暮らせるように小豆も入れるのよ」ともお話ししてくださいました。
工夫がつまった食材の保存方法
夏に収穫したかぼちゃは、寝かすことで甘くなるので、このあたり(安曇野)で採れたものは秋以降が食べ頃と言われています。しかし、年を越すと、かぼちゃが美味しくなくなったり、傷んでしまったりすることがあることため、冬至がかぼちゃを食べきる頃の目安とされてきました。
寒さが厳しかった昔は、冬至のかぼちゃだんご用のかぼちゃを凍みないように(凍らないように)大切にとっておくのが恒例だったようです。
遠藤さんは、かぼちゃを軒先の日の当たらない風通しのいい涼しい場所で新聞紙にくるんで保管していました。
また、かぼちゃと一緒に煮る小豆は虫がつきやすいので、一升瓶に入れて保存するのが遠藤さん流。栽培した豆を選るのはとっても大変な作業ですが、今でも農家のお母さんは冬の仕事として作業する方も多くいます。
この土地の食文化を大事にしたい
「おまんじゅうやお漬物などは、たくさん作ったらご近所におすそ分けしたりするけど、かぼちゃだんごは自分の家で食べるだけ。他の人がどんなかぼちゃだんごを作っているかは知らないわ」と遠藤さん。
冬至には、そのくらい当たり前にどの家庭でもかぼちゃだんごは作られていて、代々その家庭ならではのレシピが引き継がれています。
農家は季節の変わり目を大事にしています。季節の変わり目を忘れないためにも、その時々の行事食があります。「代々受け継がれてきた安曇野の食文化を次の世代にひとつでもふたつでも伝えていければ」とも遠藤さんは教えてくれました。
安曇野の冬至の郷土食を、下記のレシピを参考にぜひお試しください。
かぼちゃだんごのレシピ
材料(5人前くらい):かぼちゃ1/4個、あずき100g、小麦粉 お玉2杯程度、水(適量)、砂糖(適量)、塩(適量)
(1)あくをとるために小豆を15分くらい煮る(水はひたひたより少し多いくらい)
(2)水を新しくしてさらに40分くらい煮る(様子を見ながら)
(3)かぼちゃを一口大くらいに切る
(4)小豆が七分くらい煮えたら、水を足し、その中にかぼちゃを入れる
(5)かぼちゃが柔らかくなる前に砂糖と塩で味を調える
(6)小麦粉を水で溶き、つみ入れる
ひとくちメモ
・収穫した時に一番良いかぼちゃを冬至用にとっておく。
・冬至は、一年の農作業を終える頃でもあるので、作ったかぼちゃだんごは、神棚や仏壇に供えられるほか、きれいに洗って次に使うまでしまっておく田畑の道具に供えられたとも言います。