てんさんが作る、みどり色のまゆ
「穂高天蚕(ほたかてんさん)」は、ふつうの白いきぬ糸とちがい、とてもツヤのある、うすいみどり色をしたきぬ糸を生み出すカイコです。
このカイコが作る糸は、その美しい色だけでなく、布にしてもシワになりにくいので、「せんいのダイヤモンド」とか「せんいの女王」などとよばれます。
天蚕は、ふつうのカイコとちがい野外で育てられ、クヌギやコナラの木の葉っぱを食べて育ちます。よう虫のころは、とてもきれいな緑色をしています。
今では見られなくなりましたが、きぬ糸を生む“カイコ”を育てる“養蚕(ようさん)”は、明治(めいじ)から昭和にかけてさかんに行われていました。この時代は、日本で作ったきぬ糸が、たくさん海外に輸出(ゆしゅつ)されていました。養蚕は米作りをしながらできたため、あづみのでも養蚕をはじめる人がふえました。カイコを育てることで、農家もお金をえることができました。それぞれの家では、家ぞくのねどこよりもいい場所をカイコ用にしつらえ、「おかいこさま」とよんで大切に育てていました。しかし、その後、ナイロンなど安くたくさん作れる化学せんいができたり、戦争がおこったり色んなりゆうが重なって、だんだん養蚕も行われなくなってしまいました。