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安曇野市豊科南穂高の重柳地区にある八幡宮では、毎年秋分の日にあわせて例大祭が開催されます。このとき船の形をした山車1隻が地区内を曳き回されます。この祭り舟は、市内でみられるほかの船型山車と同じように長方形の櫓に腕木と刎木を組み合わせ、たてに割った竹をカゴの形にして曲線の腹を作り出します。舟の上には、木偶と呼ばれる人形によって歴史絵巻の一場面が再現されます。
重柳のお舟は全長約15メートル、高さ5メートルと大きく、重柳地区の稲穂たなびく水田のなかを曳かれる姿は、まるで黄金色の大海原を航海しているようです。お舟は、東の伊勢宮とよばれる場所から、西が万水川のほとりまで重柳地区を横ぎるように曳行されます。
地区内をひとまわりしたお舟は、鳥居をくぐって八幡宮の境内に入場します。境内では拝殿の前にある千度石とよばれる石のまわりを3周しておふれ(おふりょう)を渡し、神事が始まります。
神事が終わると、保存会の皆さんがお舟を取りまき前後にはげしく揺らします。この動作は「舟を煽る」と表現され、はげしい煽りの間も「お囃子方」はお舟の中でお囃子の演奏を続けます。200回を超える煽りが終わると、お舟は拝殿の前で一周まわって境内から退場していきます。
重柳の祭り舟はいつ、どのように始まったか明らかになっていません。八幡宮の祭神は穂高神社とは異なりますが、近世までは穂高神社と深い関わりがあったとされています。現在は地元の皆さんによって「重柳八幡宮祭り保存会」が結成され、お舟作りを行ったり小学生へお囃子を教え伝えたりと、祭りを守り伝える活動が続けられています。