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安曇野市三郷温の楡・住吉地区にある住吉神社では、毎年4月の最後の週末に例大祭が行われます。この時に「お船」と呼ばれる船の形をした山車が曳き出されます。住吉神社では、お船が奉納されるのは昼の本祭りだけで、前夜の宵祭りでは五穀豊穣を祈願する御幣がたてられた「舞台(ぶたい、ぶてん)」と呼ばれる別の山車が奉納されています。
割った竹を組んで作り出した“腹”
住吉神社のお船は、長方形の櫓と腕木と刎木を組み合わせた骨格に竹を縦に割って球状に組み上げた腹を作り出しています。船の上に飾り付けられる人形は「木偶」と呼ばれます。木偶は、太い針金で骨格を作り、そこに藁を取り付けて人形の形にまとめていきます。ここに新聞紙を何層にも張り合わせて、最後に和紙を貼り下地を作りあげます。この手法は「張りかんば」と呼ばれています。このようにして原形ができた木偶に色をぬり、頭を付けたあと衣装を着せて飾り付けをします。現在残っている等身大の木偶に文久3年(1863年)のものがありますが、これより古いものは子供くらいの大きさであることから、昔の木偶は等身大よりも小さかったことがわかります。
住吉神社のお船は文政11年(1828年)のものが原形だとされています。江戸時代には庄屋や組頭の指揮のもと「若キ連」と呼ばれる若者たちが祭事を行ったといわれ、戦後には「楡祭典青年」が船飾りや祭り囃子を担当していました。現在では16から28歳ほどの青年約20名が「楡祭り青年」という集まりを作って、伝統文化を受け継ぎ後継者を育てています。