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「大きく構えるより、とにかくまず始めてみようという思いでやってきた」。主に環境保全と地域の民話伝承に取り組む「NPO法人 あづみ野風土舎」の理事長を務める。あづみ野風土舎での活動に加えて、協働のまちづくりを進める市の委員会の会長や市民活動サポートセンターの市民活動サポーターも務めるなど、幅広くまちづくりに参画している。
十数年前から、つる性植物を育てて日差しを遮る「緑のカーテン」の普及に力を入れている。きっかけは、あづみ野風土舎の仲間で東京都から安曇野市に移り住んだ男性が、琉球朝顔「オーシャンブルー」を育てていたことだ。空に向かって伸びる朝顔のタワーを目にして、「その素晴らしさに圧倒された。地域に広めていきたい思いに駆られた」と振り返る。
苗を譲り受け、あづみ野風土舎の会員で栽培。育てやすいことを確認し、平成21年5月に朝顔の育て方講習会を初めて開き、参加者に苗を配布した。緑のカーテン広げようコンサートや写真展、生育の情報を交換するサロンなども開き、「初めて朝顔を育てた方から連絡をいただくなど、人と人のつながりが広がったことが何よりうれしかった」と話す。講習会を記事で見た人が、緑のカーテンをテーマにした曲を自作して提供してくれたこともあった。
講習会は令和3年で12回を迎え、配布した苗は3000株を超えたという。「今では緑のカーテンは地球温暖化防止や環境に良いことで知られているが、始めた当時はあれこれ考えるより『まず始めてみよう』という思いだった」と行動を起こす大切さを強調する。
(左の写真)朝顔の育て方講習会の様子
緑のカーテンの普及のほか、安曇野に伝わる民話「八面大王」の大型紙人形劇の上演も活動の柱にしている。安曇野市が誕生した平成17年、風土舎演劇塾として受講生約40人と八面大王を上演したのが始まりだ。当初は10分にも満たなかったが、人形や小道具などを増やして現在は約30分の大作に進化。これまでに小学校、公民館、国営アルプスあづみの公園など、公演回数は40回を超え、「年齢を問わず世代を超えて楽しめる。多くの方に見ていただきたい」と話す。
(上の写真)八面大王の公演の様子
まちづくりに取り組む上での信条は「頼まれたら基本的に断らない」だ。
あづみ野風土舎も約20年前に知人から誘われて加入し、代表職も頼まれた末に引き受けた。協働のまちづくりを推進する市の委員会は、令和元年度から会長を務めている。「頼まれることはありがたいことでもある。引き受けると大抵は楽しい」と笑う。
行政と市民による協働のまちづくりは「まだまだ進んでいるとは言えない。前進していけるよう尽力したい」と力を込めた。
(掲載情報は取材日の令和3年7月20日時点です)