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まだ辺りが薄暗い夜明け前の9月1日午前5時。安曇野インターチェンジ近くの県道脇で、花岡伸泰さんが落ちているごみを拾い始めた。「タバコの吸い殻は1日最低15本はあるね。多い日は70本にもなる」。
ごみだけではなく、草や泥を取り除くこともあり、歩く距離は日によって4から10キロ余になる。年間300日近く、こうした朝の清掃ウオーキングを続けている。「歩きながらごみを拾えば、地域がきれいになるだけではなく、心と体の健康にもつながる」と力を込める。
朝の清掃ウオーキングに加えて、歩くことを通じて会員の健康づくりと親睦を図る「健康づくり集団 安曇野市歩こう会」(会員約80人)の代表を務める。それぞれ距離が異なるウオーキングを月3回ほど開催。「最近は若者の参加者が増えてきてうれしい」と笑う。
これだけ歩くようになったきっかけは、約20年前にさかのぼる。会社勤めだった65歳の時に脳髄膜炎を患い、九死に一生を得たという。病気を機に退職し、リハビリを兼ねて当時住んでいた千曲市で千曲川の土手を歩くようになった。「少しずつ歩く距離が延びて往復45キロ歩けるようになった。入院中はトイレまで這って行き来をしていたから、ずいぶん歩けるようになったものだよ」と振り返る。
ウオーキングを第二の人生と決め、再就職先の旅行会社ではツアー客を連れて歩く業務に携わった。「ただ歩くだけではもったいない」と、国内旅行ツアーコンダクターの免許を取得。さらに、ウオーキングを基礎から学ぶため「日本ウオーキング協会」(東京)で指導者になるための講習を受け、最上位の資格である「専門講師」を取得した。
(上の写真) 歩こう会によるウオーキングの様子
約10年前、かつて働いていた会社のある安曇野市に移り住んだ。歩くことは日常の一部になっており、「せっかく歩くんだから」と自宅近くの県道脇で清掃ウオーキングを開始。平成27年に当時の寺所区長に依頼され、「寺所歩こう会」を立ち上げた。市内外の観光地などを巡るウオーキング、清掃活動などのボランティアなどを行い、寺所区以外の会員も増えてきたことから「安曇野市歩こう会」に名称を変更して会を発展。現在、寺所歩こう会は安曇野市社会福祉協議会のボランティア会として所属している。
(左の写真) 県道脇のごみを拾う花岡さん
自身が立ち上げた会のほか、市ボランティア連絡協議会長、市ボランティア連絡協議会豊科支部長、市社会福祉協議会理事といったさまざまな要職に就きながら、国営アルプスあづみの公園堀金・穂高地区専門委員(サポーター)などの活動もこなす。「頭の中じゃ次何やるか常に考えが巡っているよ」と笑う。
現在の目標は二つ。一つは日ごろ掃除をしている安曇野インターチェンジ近くの県道沿いの商店で商店会をつくり、各商店がそろってイルミネーションを点灯することだ。二つ目は、国営アルプスあづみの公園の堀金・穂高地区(安曇野市)と大町・松川地区(大町市、松川村)とを結ぶ直線距離約16キロのウオーキングコースを作ることだ。「病気で苦しかったことを思えば何でもできる。体が動く限り新しいことにも挑戦したい」
(掲載情報は取材日の令和3年9月1日時点です)